青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「で、次はお前の番だ。話せ」

 勝手に喋ったくせに、と思ったクヲンだが、それを口にしてどうにかできる相手ではない。下手をすればせっかく助かった命が危うくなる。

 素直に白状することに決めた。

「俺は、本当は………」

「ク~~~ヲ~~~ン~~~さ~~~ん!!」

 話そうとしたクヲンの声に、被ってきたのはマリィの慌しい声だった。

 しかもそれがすぐ後ろのほうから聞こえてきたので、何事かと思いクヲンが振り返ったところで、彼の目が驚愕に見開き、顔面蒼白となる。

 バタバタと翼を羽ばたかせて低空飛行してきたマリィがクヲンに突撃してきたのだ。しかも凄まじいスピードで。

 それを少しも落とすことなく、マリィはクヲンを巻き込んで湖に、大きな水飛沫を上げながら豪快にダイブした。

「あーあ……」

 灰山は少しばかりクヲンに同情しつつ静観を決め込んだ。そんな灰山の目も構わず、二人は揉め合っている。

「クヲンさんっ! クヲンさんっ! 生きてますか!? 生きてませんか!? 今、幽霊ですか!? 足がなかったりしますか!? うらめしやですか!? わ~~! ダメです!ダメです!ダメです! 三途の川を渡っちゃったらアウトですよ~~~~!」

 マリィはクヲンの胸倉を掴みながらその耳元で必死に呼びかけている。愛らしい顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっているが、それを拭うおうともせずに懸命に呼びかけている。

 が、クヲンは些かそれが鬱陶しく感じたようだ。

「だぁぁぁぁぁっ!! 生きてるよっ! つーか、今からシリアスな話しようって時に何、突撃かましてきてるんだ! 空気を読め! 空気を!」

「く、空気は吸うもので、読むものじゃないです! でも……」

 クヲンの胸倉から、マリィの手がするりと抜ける。

 そして、心底安心したような震えた声で、

「よ、よかったです……元気そうで」

 と、微笑んだ。それに怒気を抜かれてしまったクヲンはマリィの頭を撫でながら、からかうように言う。

「鼻水出てるぞ」

 その発言に気が動転したのか、マリィはどうにかしようとして、咄嗟に眼前に映ったクヲンの上着の裾を掴んで思いっきり鼻をかんだ。

 クヲンは絶句するしかできなかった。
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