青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「えっ~と・・・・・・あっちかな?」

 とりあえず気を取り直し、勘を働かせて再び駆け出す。
繰り返すが、あくまで学内の図書室に向かう際にも迷った空兎の勘だ。

 流れる見慣れぬ住宅街の景色を受け流しつつ、ひたすら足を動かす空兎。迷路のような入り組んだ道を抜け、辿り着いた場所は

 元の墓場だった。

「怪奇! こ、これが都市伝説ってやつ!?」

 己の方向音痴ぶりを怪奇現象や都市伝説の類のせいにし、一人被害妄想を繰り広げる空兎。
 春先のつむじ風が吹き抜け、言葉なきツッコミを入れた。

「あ、そうだ!」

 何か閃いた空兎は鞄の中を探り、水色の折り畳み式で、大量のストラップとデコレーションシールで飾られている自分の携帯電話を取り出した。

 その携帯のサブディスプレイに見える時刻をふと見て、空兎は驚愕した。

「うおっ! 遅刻十五分前じゃん!? マジヤバ!」

 焦りながら空兎はすぐに発信履歴から目的の人物の名前を探しだし、すぐにコールした。
 その番号は“せっちん”という名前で登録されている人物だった。


§


 教室に壁掛けてある円形アナログ時計の針を眺めながら、仙太は落ち着かない気持ちでいた。その原因は自分の右隣の席が空席であること。空兎がまだ来ていないことだ。

「まったく・・・・・・。目標を二週間でダメにするつもりかよ」

 少しイライラし始めたその時、ズボンのポケット内で、携帯が震えた。着信を知らせるバイブレーションだ。

 仙太は慌ただしく教室を出て、男子トイレの個室に駆け込んだ。
携帯電話の持ち込みは可能な校則だが、学内での使用は禁止されているので、使うときは教師達に見つからないようすることが必要だ。トイレの個室はその隠れ蓑として比較的メジャーな場所なのだ。

 ストラップが一つだけのメタリックグリーンの折り畳み式の携帯。サブディスプレイには着信相手の名前が表示されている。

 “天羽空兎”と。
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