青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
§
彼等のやり取りを見て、灰山の胸はざわついた。
まるで夢物語だ。
奇麗事の台詞だけを並べたアニメのワンシーンを見ているようで、反吐が出そうだった。
腹いせにあの二人を撃ってやろうか? という残虐な考えが一瞬過ぎったが、そんなことしてもこの気持ちが収まる保証はない。
くだらねぇ、実にくだらねぇ、と心の中で連呼し、踵を返して彼等に背を向けたその時だった。
傍らでフッという笑い声が零れるのを聞いた。
「いつからだろうな? あのような言葉が言えなくなってしまったのは」
妙に安らいだその声に、灰山は振り返る。
微笑んでいたのだ。あのルミネ・クロスネンボが。
自分のボスが。あんなガキ二人の茶番劇を微笑ましく眺めていたのだ。
「情でも移ったのかよ?」
「かもしれん。だが、それでもいい」
笑みを深めながら、ルミネは昔を懐かしむように目を伏せた。
「冒険、か……。なるほど、今の我々が失ってしまったものだ。知識が増え、技能を身に付けたことで知ってしまった。己の可能性というものを。……だが、それは、本当は知ったつもりだったのかもしれない」
いつの間にかルミネの手には一冊の“本”が握られていた。そのタイトル文字を指でなぞる。
その仕草に、灰山は妙な胸騒ぎを覚える。
「“奇跡の起こし方”、か……我々は、まだ早すぎたのかもしれないな。“奇跡を起こせる宝”に頼るのは……」
そう言ってルミネは、ポケットから“鍵”を出して“本”と重ねる。それを見て、彼が今から何をしようとするのか……灰山は、胸騒ぎの正体に確信が持てた。
彼等のやり取りを見て、灰山の胸はざわついた。
まるで夢物語だ。
奇麗事の台詞だけを並べたアニメのワンシーンを見ているようで、反吐が出そうだった。
腹いせにあの二人を撃ってやろうか? という残虐な考えが一瞬過ぎったが、そんなことしてもこの気持ちが収まる保証はない。
くだらねぇ、実にくだらねぇ、と心の中で連呼し、踵を返して彼等に背を向けたその時だった。
傍らでフッという笑い声が零れるのを聞いた。
「いつからだろうな? あのような言葉が言えなくなってしまったのは」
妙に安らいだその声に、灰山は振り返る。
微笑んでいたのだ。あのルミネ・クロスネンボが。
自分のボスが。あんなガキ二人の茶番劇を微笑ましく眺めていたのだ。
「情でも移ったのかよ?」
「かもしれん。だが、それでもいい」
笑みを深めながら、ルミネは昔を懐かしむように目を伏せた。
「冒険、か……。なるほど、今の我々が失ってしまったものだ。知識が増え、技能を身に付けたことで知ってしまった。己の可能性というものを。……だが、それは、本当は知ったつもりだったのかもしれない」
いつの間にかルミネの手には一冊の“本”が握られていた。そのタイトル文字を指でなぞる。
その仕草に、灰山は妙な胸騒ぎを覚える。
「“奇跡の起こし方”、か……我々は、まだ早すぎたのかもしれないな。“奇跡を起こせる宝”に頼るのは……」
そう言ってルミネは、ポケットから“鍵”を出して“本”と重ねる。それを見て、彼が今から何をしようとするのか……灰山は、胸騒ぎの正体に確信が持てた。