青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「アンタ、まさか?」

「私を撃っても構わんよ。……明日から私は、本業に専念する」

 その一言に、灰山は思わず絶句した。

「彼等の言葉を借りるならば、『今はゼロだけど、明日にはゼロじゃなくなるかもしれない』からな……ここで君が私を撃てば―――」

「ずるいぜ」

 ルミネの言葉を遮り、灰山は拳銃を降ろした。
 彼は、残念そうで、それでいて、どこか安堵した面持ちをしていた。

「……オレは、あんたのような過ちを犯さない。けどよ、“神杯”も諦めらんねぇ」

「なら………副業は全面的に君に託そうとしよう」

 それを聞かされたとき、灰山の全身から力が抜けた気がした。

 託そう、か。

 灰山の口が嫌でも笑みのそれになってしまう。

「……やっぱずるいぜ、あんたは……」

「……すまないな」

 心からの声を、ルミネは口にしたところで、今度は傍らまで来ていたレンカに告げる。

「そういうことだ。仲里くん、君はこれからどうするかね?」

「私は……」

 そう訊かれ、レンカは空を見上げる。
 もう星が見え始めていた。

「私は、秘書です。……最後までそうでありたいと思っています」

 真っ直ぐ目を見て答えてくれた彼女に、ルミネは変わらない二人の部下の信念に少しばかり嫉妬しつつも、どこか安心した微笑みを浮かべた。

「君らしい答えだな」


 いい意味でも悪い意味でも、人は変わっていくもいる。
 また、いい意味でも悪い意味でも変わらない人もいる。

 どちらが正しいのだろうな……?


 ルミネの中で、ふと、そんな言葉が過ぎったが、口には出さず、胸の奥にそっとしまっておいた。
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