青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「もしもし。空兎、今どこだよ?」

 声を可能な限り潜め、やや早口で電話に出ると、電話越しに聞こえてくる空兎の声は慌ただしく、仙太よりも早口だった。

『せっちんんんっ! 助けてぇ! っていうか、学校は何処なのぉ? っていうか、墓場縛りから救い出して~! マジ、ヘルプ・ミー!』

「・・・・・・・・・」

 空兎の勢いに押されるやら、要領を得ない発言に呆れるやらで、仙太は無言になる。お陰で妙に落ち着いてしまった。

「……とりあえず空兎。今、何処で何をしてるんだ?」

『何処かは分かんない! でも、何をやってるかというと・・・・・・』

 スゥっと息を吸う音が微かに聞こえた後、さっきとは違い、楽しげそうな声で告げられた。

『魔法使いと鬼ごっこ中で、現在、見知らぬ地をプチ冒険~♪』

 ブチっ!

 空兎の語尾と同時に仙太は情け容赦なく、一片の迷いもなく電話を切った。
怒りを通り越して呆れに変わった後、それすらも通り越すと、また怒りに戻ることを知った仙太であった。

 数秒とかからず、再び空兎からの着信。わざと五コールくらい待ってから仕方なくそのコールに応じる。

『ちょっと、せっちん! アタシを見捨てようなんて、どーゆーつもりよ!』

「いきなり訳の分からないことを並べらたら切りたくもなるよ。それより、後、10分と少しで君の高校一年の目標が音を立てて崩れるよ」

『おぉう! それは大ピンチ! つーわけで、せっちん! バビュンと助けにきて!』

「無茶言うなよ。僕はもう学校内にいるんだ。今更、学外には、出られないよ」

『おのれ、せっちん! ご尤もなことを・・・・・・・・・ん?』

 ふと、空兎の声色が変わったことに気付き、仙太は怪訝に眉をひそめた次の瞬間、電話の向こうから空兎の絶叫が轟く。

『カラス! 猫ーーーっ!』

 その叫びと同時に轟くガチャッという落下音。
 そして駆ける足音と、それに少し遅れて、なにやらカラスと猫の鳴き声、しかも大群の合唱がこだまして、すぐに不自然な感じで電話がブツリと切れた。


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