青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「これはね、あるトレジャーハンターの冒険譚を、ある魔法使いが書き記し、封印を施したものなの」

「ま、マジっすか!?」

「へぇ、それはそれは、凄いものなんですね」

「・・・・・・・・・」

 空兎とジョーの反応は上々だが、仙太は呆れて果てた沈黙でその場を流した。

(その魔法使いは大きい字を書く人だったんだなぁ)

 などと、内心で嫌味を言ってみるなか、セレビアの話は続いた。

「空兎やせっちゃんは、この本を読んだみたいだから知ってるだろうけど、これはタイトル通り、“奇跡”を起こす方法が書かれていて、その方法である“奇跡を起こせる宝”の在処を示す案内書でもあるの!」

「えっと、それはつまり、それは、とあるトレジャーハンターの冒険譚の内容そのものが“宝”の在処を示している・・・・・・ってことですか?」

「はい、ヒーローくん、正解! つまり、この“本”の記述通りに行けば、その“奇跡を起こせる宝”が見つかるってかもってことよ!」

 ウィンクして楽しげに答えるセレビア。
 その時、仙太は、あることを思い出してセレビアに発言した。

「でも確か、その本の最初の方には、こう書かれていましたよね」

 言いながら長机に置かれた“本”を捲ると、それが記述されている部分を指差した。

「“その宝はまだ誰も見つけていない。すなわち、まだこの世に奇跡は一度も起きたことがいないのだ。”って・・・・・・この記述が本当だとすると、この冒険譚の“本”通りに行っても、“宝”があるわけじゃなさそうですし、“宝”そのものの存在すら怪しいじゃないですか?」

 仙太の言い分にジョーは感心していたが、セレビアは不敵に返す。

「中々鋭いわね。けど、もう少し考えてみて?じゃあ、何故、この筆者はこんな冒頭から始めて、こんな分厚い本を書いたのかしら?
 確かにこのトレジャーハンターは“宝”に辿り着けなかったのかもしれない。けど、こうして本という形に残したのにはそれなりの理由があるはずよ。ただ“宝”の存在を後世に知らせるなら、ペラペラの古文書でも良いわけだしね」

 セレビアの言い分も尤もだという風にジョーは頷いている。

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