青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
 一人になった灰山は頭を掻きながら、とりあえず用を失った携帯電話をポケットに戻した。

「ま、お手並み拝見ってとこだな」

 自然と、そんな言葉が漏れた。
 落ち着かない気分から、禁煙を破ろうかと思ったが、ライターを持たないようにしていたのを思い出して、不承不承といった感じで諦めた。

 都合が良かったはずの公園の人気のなさが、今は無性に寂しく感じられた。


§


 学校の正門で待機していた空兎とセレビアに、仙太とジョーが合流したのは、あれから三十分程経った後だった。

 二人は店の責任者に散々怒られた後、予想通り割れた皿などの弁償を要求されたが、仙太もジョーも手持ちのお金では不足していたので、結局、ジョーが連休明けから、一ヶ月間、あのファミレスでタダ働きすることで、話がついたという。

 本来ならば、仙太は親や学校に報告されるところだったが、ジョーの誠実な説得の甲斐あって、それは間逃れたようだ。

「さっすがジョーさんだね!」

 空兎の称賛に、照れるジョー。その横で仙太は片手で頭を抱えた。

(そこは、説教するとこです・・・・・・)

 お人好しが過ぎるジョーの代わりに、後で自分がよく言っておこうと考えた仙太だった。

 そんな会話もそこそこに、セレビアが本題を切り出した。

「さて、そろそろ始めましょうか」

 そう言いながらセレビアは、周りに他に誰もいないことを確認して、“本”を一同の前に見せた。

「さっき言ってた、“鍵”の在処を指し示す方法ですか? でも、一体どうやって?」

 疑問符を浮かべる仙太に、セレビアは自信たっぷりに微笑みながら、

「まぁ、見てて」

 と、告げて、“本”を合掌の形で、両手に挟んだ。
そして、目を閉じて、厳かに呪文を唱え始めた。


 −本を封ずる鎖よ
  汝の対なる存在を
  指し示せ−


 その呪文を唱えながら、両掌をテーブルにして、“本”を一同に見せるようにして置くと、“本”全体が神秘的な光に包み込まれ、淡く輝き放っていた。
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