青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
 本来ならば癒されそうな空間だが、付かず離れずという風に感じる奇妙な気配がそれを損なわせている。

「森林浴にしては、気分が悪いわね・・・・・・」

 いつの間にか額に滲んだ汗を手の甲で拭いながら、周囲に警戒線を張り巡らす。気配こそ感じるが、何かが起きるという様子はない。

(・・・・・・もしかして、単なる思い過ごしとか?)

 そう思った矢先、ガサガサと木々が風とは別の影響で揺れた。反射的に音がした方向を見て、奥に踏み込むセレビア。

 しかし、そこには特に変わったものは見当たらない。

「……ウサギでも跳ねたのかしらね」

 どこか腑に落ちない気分になりつつ、セレビアは踵を返して来た道を帰ることにする。
 その背後で純白の羽が一つ、ヒラヒラと舞い落ちてきたのをセレビアは気付くことがなかった。


§


 元の湖畔にセレビアが戻ると、ジョーが淹れた紅茶で和んでいた空兎達が一斉に彼女に顔を向けた。

「あ、セレビアさ〜ん、おっかえりーっ! 長いトイレだったねぇ」

 そんな空兎のいきなりの予想外発言に、セレビアは思わず何もつまずく物がないところで転びそうになった。

 その様を見て、今度はジョーが告げる。

「あ、もしかして違いましたか? いやぁ、僕はてっきりお手洗いに行ったのかと思いまして」

(あなたが確信犯ね!)

 気まずそうに頭を掻いている爽やかスマイルヒーローを、セレビアは、ひと睨みしから憮然とした態度で、彼から紅茶カップを受けとると、三人の輪に加わった。

「トイレじゃないわ。ちょっと変な気配を感じてね。探っていたのよ」

「え!? え!? 誰かいたの!? どこのくせ者なの!?」

 今にも飲んでいる紅茶をぶちまけそうな勢いで食いついてくる空兎に、セレビアは紅茶で荒ぶった気持ちを静めた口調で話す。

「どこのくせ者かは結局、わからなかったわ。もしかしたら気のせいかもしれないけど、油断はしない方がよさそうね」

 そしてまた紅茶を一口含む。パックのものにしては上質な味が広がったことに、思わず顔を綻ばせそうになるが、緊張感を持って一同に告げる。
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