ピストルと彼的論理観
「君が満足のいく解決法を僕は知っているよ」
甘ったるく焦らすように“彼"は、わざとゆっくり言葉を紡ぎました。
「それは、一体どんな…」
「僕と結婚すればいい」
「……」
−…ガシャンッ。
力の抜けたわたくしの手から滑り落ちたティーカップが床に跳ねて割れてしまいました。
「あちゃー」と言いながらも布を持ってきて“彼"は割れた破片を片付け始めて、わたくしも慌てて腰を屈めますが、破片に伸ばした手をそのまま“彼"に拒まれてしまいました。
「危ないから君はダメ」
ふいに握られた手の温度に驚いて、わたくしは咄嗟に手を振り払いました。わたくしの熱くなった手と同じように、“彼"の手も熱をもっていたのです。
「気を遣ってくださってありがとう。けれど、わたくしは、誰かに大切にされるほどのいい女でもありませんし、普通の女性とも違うんですよ」
「男ってこと?」
「違いますっ」
くす、くす、くす。
笑いながらも素早く破片を片付けていく“彼"は、明らかにわたくしをからかっているだけでしょうに、わたくしの手はますます熱くなって仕方ないのです。
「言っただろ?人は殺し屋じゃなくたって人を殺せるんだ」
“彼"は言います。
「君は、フツーの女だよ」
【ピストルと彼的論理観】
END.