旋律の紡ぐ物語
血色が少し良くなったみたいだ。


「お風呂、ありがとうございました」


…喋った!
透き通った綺麗な声だった。


「どういたしまして。おかゆ食べれる?」


「はい…」


「そこ座って」

卵粥をよそって渡すと、ゆっくり少しずつ食べ始めた。


「煮物も食べれたら食べて」

俺はそういって煮物を置き、コンポの電源を入れた。


流れるのはThe Pianoのサントラ。美しく心に響くピアノの旋律。










「michael nyman…」



その子は初めてふんわりと微笑みをもらした。


「よく知ってるね」


「はい。この曲も映画もとても好きで…」


その子はそう言うとまた少し微笑んで、曲に聴き入っていた。











その子がおかゆを食べ終え、track4が終わったとき、俺は尋ねた。

「君、名前は?」







彼女は答えた。

「…分かりません」

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