涙~貴方を愛して~
『えっ!?…。』


私は無意識だった為記憶になかった。

コウちゃんに言われて初めて気が付いた。



『ねぇ…本当にオレのこと好きと?』

『うん。好き。』

『でも、アイツのこと忘れてないっちゃろ?アイツのこと忘れるまで、オレはしばらく会わんでも良いよ?』

『嫌だ…。会わないなんて嫌…。』


私は震える声で答えた。

今にも泣き出しそうだった。


コウちゃんは“しばらく会わなくても良い”と言い残し、私から少し離れて歩き出した。


私は何が何だかわからずに、フラフラしながらも歩いて駅に向かった。



帰りの電車の中…

険悪な空気が漂っていた。

コウちゃんは何事もなかったかのように、同じ部活の男子と喋っていた。

だけど私は、ずっと一言も喋らずに俯いていた。

私の目から零れ落ちる、数滴の涙の雫を隠しながら…。


『先輩……泣いてない?』


クラブメートの男子が、私の方を見てコウちゃんに話し掛ける。


『さぁ?知らねー。』


コウちゃんは、冷たくそう言い放った。


帰りの電車の中で、私が顔を上げたことは一度もなかった。

コウちゃんの顔を、まともに見る自信がなかったから…。
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