短編:誘い(いざない)【完結】


 私は思わず"彼"の耳に触れ聞いた。


「これって本物なの?」

「耳の事? 本物でもあるし、偽物でもあるよ。」


 "彼"はにっこりと笑って言った。


「どういう事? それに夢じゃないよね。感触があるし、声もはっきり聞こえるし、意識ははっきりしてるはずだし……。それにあなたは誰? 何故ここにいるの?」

「そう、これは夢じゃないよ。現実。僕の名前はルイス。僕は瑠璃を迎えに来たんだ。耳のことは後で話してあげるよ」


『迎えに来た』その言葉を聞いた時、私は嬉しかった。

 この嫌いな"現実世界"から開放されると思ったのだ。


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