紫輝‐シキ‐




そんなあたしを悠希は、心配そうな目で見ていた。


「大丈夫だよ。悠希。心配しないで?」



あたしはそう言ったけど、悠希はやっぱり気にしているようだった。




…もう思い出さないようにしなきゃ。


悠希に心配かけちゃう。



あたしはそう思って涙を拭いた。





「泣けばいい。泣きたいなら泣けよ。」


不意に、悠希はそう言った。


でも…………


「泣かないよっ?何もないもん!」



あたしはそう言って、泣かなかった。



悠希はそうか、と言ってそれ以上はなにも言わなかった。






< 168 / 246 >

この作品をシェア

pagetop