紫輝‐シキ‐
「多樹は…なんて?」
凌が心配そうな様子でそう聞いてきた。
「命に別状はないって。ただ、血が出すぎてるからすぐには動けないって。」
「そっか…。」
部屋には、重たい空気が流れていた。
「愛南。俺達…ちょっと用事があるんだ。多樹が目を覚ますまで…ここに居てくれないか?」
不意に惟がそんなことを言った。
「惟…でも…」
尚が何かを言おうとすると…
「分かってる。多樹が目を覚ますまでは何もしねぇ。準備だけだ。」
惟がしっかりとした口調でそう言った。