紫輝‐シキ‐



すると多樹は急に真剣な顔をして、話し出した。


「俺、親とは縁切ってんだ。だから家族は姉貴だけっていうか…。

俺の親は俺が小3のとき離婚した。

原因は親父の浮気で。俺は子供ながらに浮気した親父を憎んだ。絶対にこんな大人にはならねぇって思った。

離婚するとき、どっちの親について行くかって聞かれて…俺も姉貴も迷わず母さんに着いていくって言ったんだ。
母さんも二人は連れていくって親父に言ってた。

……でも、親父は俺達二人を連れていくって言い出して…結局母さんは金銭的に二人を育てられないってことで俺達は親父に引き取られた。

親父は、母さんが出て行って三人になったとき、俺達に「すまない。」って謝ったんだ。

それを聞いて子供だった俺達は安心した。

『ああ…父さんは自分達を大事にしてくれるんだ』ってな。

でも…現実はそうじゃなかった。」




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