紫輝‐シキ‐
「俺は、こんなやつとは一緒にいられないって思ったけど…小3の俺に何か行動が起こせる訳もなくて、毎日必死で我慢した。
朝は早くに家を出て、時間をかけながら学校に行った。
学校に行かないでおこうかと思ったけど、それじゃ逆に女が母親面するって姉貴が言って、出来るだけ普通の子供を演じた。
だけど…家に帰るといつも女がいて、俺達に気に入らようと、ケーキ焼いたりクッキー焼いたり、うぜえことばっかしてた。
我慢したけど…もう堪えられなくて……小5のとき家を出た。
姉貴も同じ頃に家出した。
それからしばらく姉貴とは連絡もとってなかったし…何してたかは知らねぇ。
俺は、あてもなく歩いてどこか知らない所に行った。
泊まるとことかねぇから…公園とかで寝てた。
そしたら……地元のヤンキーに目ぇ付けられたっぽくて、意識がなくなるくらいボコされた。
いま思ったら…あれは何だったのか、分かんねぇな。
たしか目が気にいらねぇって言われた気がするな。」
多樹はそう言って力無く笑った。