− 夏色模様 −
「気にしないで下さい。 これも“練習”っス」
軽々と持ち上げる姿は、まさに男の子。
いっくんとはまた違う、逞しさがある。
でも……。 いっくんが一番かなー。
「あっ、木下先輩。 今、前田先輩のこと考えていませんでした?」
「えっ、違うよ」
少しだけ、体に熱を感じる。
本当は少しだけ、いっくんのことを考えていた。
「先輩たちって本当に仲が良いっスよね」
「昔から、仲が良かったからね」
「そう言えば……。 愛川先輩って、どうしたんですか? 昨日、なんだか調子悪いみたいでしたよね?」
うん、優ちゃんね。
あたしも様子がおかしいとは思ったけど……。 最終的には、いつも通りだった。
だから、深くは気にしないようにしていたんだけど……。
「やっぱりあれかなー、原因って……」
隣を歩く“彼”が気になることを言い出した。