− 夏色模様 −
ふーん、西村くんって言うんだ。
知らなかった。
赤いゴムが印象的で、それしか覚えていない。
「木下先輩、今夜。 待ってますから!」
「えっ、あー。 うん……」
あっ、行く気が無いのに“うん”なんて言っちゃった。
訂正しないと……。
「今夜、まおに何か用事でもあるのか?」
いっくん?
普段、あまり聞かない……。 低い声で、西村くんに話しかける。
「ちょっと木下先輩とお話したいなーって思ったんです」
「別にそれって、夜じゃなくてもいいんじゃねーの?」
いっくん!
そんなこと、あたしたちだって言えないからそんな強く言ったらダメだよ。
あたしたちだって、夜に会っていたんだから……。
「つーか、部員は9時には消灯だろ? そんな遅くにまおが西村んとこにいたほうが問題だ」