− 夏色模様 −




「木下先輩、今夜……。 来てくれますよね?」


「えっと……」


不意にあたしに、話しを振られた。


今のあたしの頭は全く機能していなくて、うまく答えられない。


そんな状況を無視して、西村くんは言葉を続ける。


「昨夜、前田先輩も、愛川先輩もお互い“好き”って……。 言っていましたよね?」


聞きたくない。

あたしといっくんは、付き合っているわけじゃない。


だから、誰とどこで何を言おうが関係無い―――。 そうわかっているのに。


いっくんが頭を撫でるのも。

手を繋ぐのも、自転車の後ろに乗るのも……。


あたし以外にやって欲しくない。


だから、いっくんの口から“好き”なんて、言葉。

聞きたくないのに……。


「あぁ、言ったよ。 “――― 好き”だってな」


どうして、普通に言っちゃうの?


普段なら“俺のキモチも考えろ”なんて言って来るのに……。

今は、あたしの気持ちを考えてよっ!




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