− 夏色模様 −
溢れ出しそうな涙を、グッと堪える。
「まおっ、俺の話しを聞け」
「あとで、きく……」
声が、震える。
泣きそうなのが、バレてしまう。
「今は、ききたくない」
「俺は今、聞いて欲しい」
強情なヤツ。
いっくんは優ちゃんを好きなの? 優ちゃんは、陽太くんの彼女、なんだよ?
なのに……。 どうして?
いっくんはあたしに“ゆっくり好きになってくれればいい”って言ってくれたのに……。
あたしが全然“好き”って言わないから?
だから、優ちゃんを好きになった?
「愛川に言った言葉は意味が違う。 愛川が好きって意味じゃない」
「じゃあ、なんなの?」
「そんなの……。 まおが一番分かっていることだ」
あたしが一番わかること?
そんなの……。
――― わからない。