− 夏色模様 −
「わからないよ」
いっくんの好きな人って誰なの?
前はあたしに期待させるようなこと言って、あたしが“好き”って言わないから乗り換えた?
そんなの……。 最低だよ。
「ったく……」
「――― ッッ」
「俺は簡単に揺らがない―――」
腕を引っ張られ、いっくんの胸の中に収まった。
左の耳元をくすぐる、いっくんのその声が、やけに…… 切ない。
「俺にはずっと、まおだけが特別なんだっ。 お前は俺をどれだけ見てきたんだよ……」
力強く、抱きしめられた。
あたしだって、いっくんを見てきた。
さっきは、どうしようもなく切なくて……。 悲しくて……。
「いっくん……」
「まお、俺から離れるなよ……。 頼むから」
いっくんの切ないその声が、あたしのココロを刺激する。
「まおが居なくなったら、困るんだから―――」