− 夏色模様 −




あたしだって、いっくんが居なくなったら困る。

いっくんがいるから、今のあたしはいるんだから―――。


「まお……。 頼むから―――」


あたし……。 バカみたい。

あたしはいっくんの何を見てきたの?

いっくんはいつもあたしの傍に居てくれたのに……。 助けてくれたのに。


「ごめんね……」


疑ったりして、ごめん。

拒否して、ごめん―――。


いっくんの腕の中で体を回して、胸に顔を埋めた。


「ごめんね、ごめんね―――」


「もういいって……」


泣いているあたしを邪険に扱いもせず。

ガラスを扱うように、丁寧にしてくれる。


今だけは、誰にも邪魔されたくない。


優ちゃんも…… 陽太くんにも、いっくんとのこの時間だけは邪魔しないで。


少しの間だけ、いっくんに甘えさせて―――。




< 119 / 300 >

この作品をシェア

pagetop