− 夏色模様 −
あたしだって、いっくんが居なくなったら困る。
いっくんがいるから、今のあたしはいるんだから―――。
「まお……。 頼むから―――」
あたし……。 バカみたい。
あたしはいっくんの何を見てきたの?
いっくんはいつもあたしの傍に居てくれたのに……。 助けてくれたのに。
「ごめんね……」
疑ったりして、ごめん。
拒否して、ごめん―――。
いっくんの腕の中で体を回して、胸に顔を埋めた。
「ごめんね、ごめんね―――」
「もういいって……」
泣いているあたしを邪険に扱いもせず。
ガラスを扱うように、丁寧にしてくれる。
今だけは、誰にも邪魔されたくない。
優ちゃんも…… 陽太くんにも、いっくんとのこの時間だけは邪魔しないで。
少しの間だけ、いっくんに甘えさせて―――。