− 夏色模様 −




そんなあたしの気持ちを察したのか。


「抱きしめて上げたいんだけど……」


“抱きしめて欲しい―――”

でも、少しだけ。

“怖い―――”


目の前にいるのは、いつものいっくんだけど。

さっきのいっくんでもある。


「もう“絶対”怖がらせないから……。 少しだけ、抱きしめさせて―――」


ゆっくり伸びてきたその腕に、スッポリ収まる。

でも、背中に腕を回すことが出来なくて―――。


胸の前で、ギュッと握りしめた。


「まお、マジでごめん」


…… いっくん?


泣きそうなその声に、あたしのココロが刺激された。


「あんな、怖いこと。 マジで、ごめん。 怖がらせたな……」


力は強いのに……。 いっくん自身の力強さは、全く感じない。

弱くて……。 今にも崩れてしまいそうだ。




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