− 夏色模様 −
「まお、ごめん……」
微かだけど……。 いっくんの体が震えている。
もしかして、泣いている?
“泣き虫っ” って言って、あたしをバカにするいっくんが泣いている?
「頼むから、嫌わないでくれ―――」
ギュッと、より一層強く抱きしめられたけど……。
「…… 泣いているの?」
声がだんだん掠れて、今にもいっくんが崩れてしまいそう。
「泣いちゃ、だめだよ」
「泣いてねーよっ」
説得力が全くない。
ゆっくりいっくんの胸を押して、見上げようとしたけど。
「見んなっ」
頭を押さえられ、いっくんの胸に押さえ付けられた。
「泣いちゃ、だめ。 いっくんの泣き虫」
「まおに言われたら、おしまいだ」
ハハッと軽く笑って、今度は優しく抱きしめられた。
「いっくんの泣き虫ー」