− 夏色模様 −
いっくんは、あたしを危険から守るためにあんなことをしたんだ。
危機感が薄いあたしにわからせるために……。
自分の身をもって、あたしに教えてくれた―――。
「もうすぐで着くから……。 後ろでおとなしくしてろ」
「ん……。 わかった」
今はただ、何も言わなくていいから……。
こうやって、いっくんといたい。
* * *
「じゃあ、シャワーでも浴びて、部屋で休んでな。 夕飯になったらまた、愛川が呼ぶだろうから」
「ありがとう」
旅館の従業員の目を気にすることなく、いっくんはあたしを部屋の前まで連れて来てくれた。
昨夜、使われなかった布団がそのままだから、シャワーを浴びるだけなんだ。
「じゃっ、夕飯で」
「んっ、あとでね」
部屋の前で、手を振って別れる。
でも、どうしてだろう……。
いっくんは、夕飯に現れないような気がするの―――。