− 夏色模様 −




こうなったら、強行突破しかないっ!


「あけるからねー」


たまに、家のカギを掛け忘れるいっくんだから、今回も掛け忘れているような気がする。

そっと、ドアに手を掛けた―――。


「――― っっ!」


「なにしてんだよっ」


ドアが急に開いた。


もちろんここはいっくんの部屋。

目の前に立つのはいっくんなんだけど。


「髪、濡れている。 お風呂上がり?」


「あー、これか?」


いっくんが濡れた髪に触れた。


「まだ、乾いてねーだけ。 ちょっと今まで手が離せなかっただけだ。

…… で、まおはどうしたんだ?」


“様子が気になったから、見に来た” って、素直に言えたらどれ程ラクだろうか。


「髪、乾かした方がいいよ?」


「サンキュー、まおはどうする? 部屋に戻るのか?」




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