− 夏色模様 −




本当は、もう少しだけいっくんといたいってのが“本音”だけど。

上手く言葉に出来ない。


「まお?」


だからあたしは、キュッといっくんの服の裾を掴んだ。


「中、入るか?」


「うん」


小さく頷いた。


いっくんが肩に腕を回し、あたしを招き入れた。


部屋の中は昨日と変わらず、綺麗に整頓されている。

ゴミ一つ落ちていない。



「なにか飲むか? って言っても、お茶か水しかねーけど……」


「お茶でいいよ」


「リョーカイ」


今日は窓際の方に座る。

月明かりに照らされて、海が輝く―――。


「ほら、お茶」


「ん、ありがとう」


コトリと、お茶が目の前に置かれた。


いっくんはあたしの向かい側に腰を降ろした。


「んで、なにかあったのか?」


足を組んで、あたしに視線が向いた。




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