− 夏色模様 −




「あーっと……」


「ん? どうした?」


ただ、いっくんに会いたかったって言うのも本音だけど。

いっくんの様子が気になったのも本当。


「なにか西村に言われたのか?」


「ううん、それは無い」


そこはしっかり否定する。


「いっくん……」


「どうした?」


「…… ギュッてして?」


「……」



修学旅行の時“いつでもギュッしてくれる”って言ってくれたもん。

だから、今。 いっくんにギュッてしてほしい―――。


「昼間、あんなことされたのにか?」


「いっくんだもん。 怖くない」


「…… じゃあ、おいで」


両手を広げて、あたしを迎えてくれる。

だからあたしは、その腕に収まる。


今はいつものいっくん。 何も怖くない。


いっくんのヒザに乗り上げ、いっくんを見下ろす。




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