− 夏色模様 −
3日目⇒ 俺だって……。
「…… んっ」
「起きたか?」
やけに近くから聞こえる、いっくんの声。
重くて上がらないまぶたを上げようとするが、まぶたは一向に下がったまま。
その優しい声につい、甘えてしまいたくなる。
「また、時間も早いからもう一回寝るか?」
寝たいな……。 朝ごはんの時間は7時だから、それまでに食堂に行けばいいんだけど。
「いっくん…… ?」
重いまぶたをゆっくり上げた。
「ん、まお。 どうした?」
寝起きのせいか、目が霞む。
「いっくん……。 おはよう」
「――― おはよう」
鼻で少し笑って、あたしの頭にいっくんの手が伸びてきた。
昨夜―――。 布団に入ってから、いっくんはずっとあたしの頭を撫でてくれた。
本来なら、あたしがいっくんの頭を撫でるはずだったんだけど。
あまりにも、いっくんの撫で方が優しくて……。 つい、そのまま夢の世界へ旅立ってしまった。