− 夏色模様 −




もちろん、あたしたちの間に“隙間”はあるけど……。 いっくんの自業自得ってやつだ。


「…… ん、サンキューな」


「別に……」


くしゃっといっくんに髪を撫でられた。


「ボサボサになるっっ」


「なったら直してやる」


“触るなッッ!” って強く言えないのは、きっと……。

いっくんがいつもと違うから。

なんだろう…… 見た目はいつもと変わらず、ムカつくような余裕そうな顔をしているけど。

どこか、悲しそうな顔をしている……。



「伸びたな、髪」


「うん、切ってないから」


毛先をいじっては、ゆっくり髪を梳(ト)かす。

ガラスをいじるかのように、優しく触れて来る。


これでも一応、避けていたんだけどな、いっくんのこと。

でも、いっくんの手があまりにも優しくて、まぶたが下がりそうになる。




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