− 夏色模様 −
ほらっ、いつもあたしをバカにする……。
バカにする…… んじゃなくて、あたしが子供なだけなのかも。
「よしっ、行くか」
「はーいっ」
でも、あたしはちゃーーんと知っているよ。
いっくんがどれだけあたしをバカにしたって…… 子供扱いしたって。
いっくんはいつも、あたしの“右側”を歩いてくれる。
もちろん、道路が左にある場合は左を歩いてくれる。
だけど…… 広い道で安全が確認出来た時は、必ずと言っていい程あたしの右側を歩く。
今だってそうだ。
旅館からコンビニまでは、車が全くと言っていいほど通らない。
時間も夜の9時に近づいている。
「いっくーん」
「なに?」
「呼んだだけー」
「意味も無いのに呼ぶなよ」
歩くのが遅いあたしにだって、ちゃんと合わせてくれる。