− 夏色模様 −




後半……。 前田くんが少し、寂しそうに笑った。


前田くんはまおが好き―――。

好きでしょうがないけど……。 なぜか、二人は付き合っていない。

二人で決めたことだから、あたしがとやかく言えないんだけど……。



「ほらっ、陽太っ。 パスッ」

「――― うわっ!」


ボールをいきなりパスされて、桐谷の体がよろめいた。


「俺は何のためにわざわざこんな遠いところまで呼ばれたんだ?」


「俺の助っ人デス……」


「だったらそろそろ練習すっぞ。 俺は2年の方を見るから―――」


2年って……。 西村くんがいるチームじゃん。


「アイツ、相当不安がってないか?」


「うん、あたしも思う……」


普通……。 わざわざ、自分が好きな女の子が狙っている人のとこに行く?

あたしなら、絶対逃げるのに……。


やっぱり、あたしには"前田 樹”って人がよくわからない。



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