− 夏色模様 −
「ここ数ヶ月。 まお、俺ん家に何回来た?」
「……」
ここ数ヶ月……。 正直、いっくんの家には一度も行っていなかった。
いっくんは冬の“センター試験”と“一般入試”の為にずっと勉強していることは知っている。
バイトも、受験だからって夏休み前で辞めた。
いっくんがどれだけ受験に取り組んでいるか、一番近くで見ていたから、いっくんの邪魔をしないようにしていた。
あたしがいっくんの家に行くと、いっくんは“あたしを優先する―――”
それが分かっていたから、なおさら行かなかった。
「そんな理由だと思ったし」
当たり前。 いっくんの未来をあたしのせいで、潰して欲しくない。
いっくんには、いっくんの未来がある。
今は、あたしと過ごすことより“受験”のことを考えて欲しい。
そうやって思うことは、イケないこと?