− 夏色模様 −
「俺は、いらないって」
「いーじゃん、いーじゃん」
お会計に向かった。
今回、いっくんの分を買ったのにはちゃんと理由がある。
いつも…… 毎回、いっくんにはお世話になっている。
今日だって、お昼ご飯をおごってもらった。
「恩返しだよ」
「せめて“お礼”って言えよ……」
お礼も恩返しもどっちも同じだ!
いっくんは諦めたのか、何も言わずにあたしとレジに並んでくれた。
お会計を手早く済ませ、あとは…… 旅館に帰るのみ。
「いっくん、ケータイちょーだい」
旅館に帰るために、朝乗ってきた無料バスを待っている最中である。
あと、10分は来ないらしく…… この間にいっくんのケータイにストラップを付けてしまおう!
「お前なー、俺は普段からストラップなんて付けないのっっ」