− 夏色模様 −
実は……。
“まお、前田くんにお願いするときは見上げるようにして言ってみな。 そうしたら、前田くん。 まおの言うことを何でも聞いてくれるから”
優ちゃんから、来る前にこんな事を教えてもらっていた。
まさか、それが役に立つとは思ってもいなかった。
「ほら…… 付けるから、ストラップ貸せ」
赤くなった顔を隠すようにあたしに手を差し出してきた。 ちょこんっと、その手の上に、青いイルカを置く。
「次は無いからなっ」
「はーいっ」
文句を言いながらも付けてくれるいっくんが嬉しくて、自然と顔が綻ぶ。
「ケータイ借して!」
付け終わったいっくんのケータイ借りて、太陽に翳(カザ)す。
光りに反射して、キラキラ光る。
つんつんと、指で突き揺らす。
「付けてくれて、ありがとう」
「次は絶対、付けないから」