− 夏色模様 −
“絶対安静”な俺は、練習試合に出させてもらえるはずもなく……。 こうやって、体育館の2階からチームメイトの応援をするしかない。
たかが、高校生の練習試合。 応援に来る、物好きは少ない。
俺の回りを見渡せば…… 俺の斜め前に座る、女がただ1人だけ。
先輩だと思うが、名前なんて気にならない。
その女を観察していて気付いたが、コートを見つめる目は“バスケが好き”って言う、純粋な瞳ではない。
どうせ、バスケ部に好きなヤツがいるんだろう。
さっきからずっと、2年生…… 部長兼キャプテンの桐谷先輩の姿を追っているように見える。
バカなヤツ。 桐谷先輩には、バスケ部のマネージャーの愛川先輩っつー、彼女がいるのに。
「“樹”頼んだっ」
桐谷先輩の手から、前田先輩の手にボールが渡った。