− 夏色模様 −




――― 試合が終わった。


俺達の高校が勝ったことは、純粋に嬉しい。 だけど、自分がコートに立てなかった事が――― 悔しい。


体育館に視線を移すと、部員たちが片付けを始めていた。


“お疲れ”の言葉を言いに行こうと思い、俺は立ち上がろうとした。


「――― っと」


「危ないっっ!!」


バランスを崩し、倒れそうになった。


「大丈夫ですか?」


「あっ、はい……」


だが、斜め前に座っていた女の先輩が俺を助けてくれた。


「ケガ、しているんですか?」


「あっ、ちょっと……」


なぜか、敬語。 俺の方が、年下なんだけど……。 まぁ、いっか。


「あたし、これから下の階に行くんです。 付いて行きましょうか?」


そんなたいしたことない。 ただ、バランスを崩しただけなんだから、一人でだって大丈夫だ。


だから、柔らかく断った。




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