− 夏色模様 −
前田、先輩……。
まお先輩が居なくなったと思ったら、次は前田先輩が隣にやってきた。
「ケガしてるんだって? 歩きづらいだろうから、俺の肩に腕回して」
「いえっ、そんな大したケガじゃないんで…… !!」
「いいからっ。 階段から落ちて、ケガを悪化させたくないだろ?」
前田先輩と話すのは、初めてだ。
いつも、桐谷先輩や2年生の先輩たちとばかり話している。 だから、1年生の俺は前田先輩のプレーをいつも見ている程度。
そんな前田先輩が、俺を助けてくれている。
「あと少しだから、頑張れよ」
“クールで女子と密接な関係を作らない” なんて、噂を聞いたことがある前田先輩が、俺を支えてくれているなんて……。
夢のようだ。
密かに、前田先輩には憧れていた。
テスト後に張り出される上位30名の中に、前田先輩の名前はいつも入っていた。