− 夏色模様 −
微笑み掛けてくれるその笑顔は、まるで“天使”のようだ。
前田先輩のあとを追うようにして、まお先輩は立ち去った。
「なにしてるんだ、雄飛」
「なぁ、捺稀……」
「なんだよ……」
捺稀の問い掛けに無視したことが、若干気に障ったようだが…… 俺は気にせず続けた。
「前田先輩と歩いている人って、誰だ?」
遠くに見える二人は、なんだか仲睦まじい。
まお先輩は、前田先輩を“いっくん”と呼んでいた。
クールだと言われている前田先輩が、まお先輩の前では表情が普段と丸っきり違う。
あの二人の関係って、なに?
「あー、前田先輩の隣に歩いている人だろ?」
捺稀がなにか知っているような感覚で話し出す。