− 夏色模様 −
「木下 まお(キノシタ・マオ)先輩。 前田先輩と同じクラスで、あの二人…… 結構仲がいいみたいだぞ」
「ふーん……」
“仲がいい”
そんな簡単な言葉では済まされないような気がする。
あの二人の醸(カモ)し出す空気は、まるで――― 恋人。
「前田先輩って、彼女…… いたっけ?」
「いや、前田先輩には彼女はいない」
だよな。 俺だって、前田先輩に彼女がいるなんてこと、聞いたことがない。
俺のクラスの女子が前田先輩に好意を持って人たちだって“彼女候補”とか、言って騒いでいる位だ。
「木下先輩って、前田先輩の何だと思う?」
「知らね。 そういうのは、桐谷先輩とか愛川先輩に聞くべきだろ」
だよな……。
ふーん、木下 まお先輩か。
1年生 秋。
葉っぱが色付き始めたこの頃……。
西村 雄飛(ニシムラ・ユウヒ)
小さな恋が、始まった。