− 夏色模様 −
おい、今の…… どういうこと?
木下先輩が耳聞こえないって、初耳なんスけど?
「だから今日、陽太に頼んだんだろ? 部員に少しでもまおのことを話しとけば、珍しげにまおに視線がいく。 まおの後方に来たボールだって、誰かが気付くかも知れねーし」
「お前ってヤツは…… まおちゃんに関しては、労力を惜しまないな」
「ったりめーだ」
俺はその場から、動けなくなってしまった。
先輩たちの声は、次第に小さくなり…… 今は体育館で練習する音しか聞こえない。
「嘘だろ?」
信じがたいことだ。
遠くから見ている木下先輩は、いたって普通。
ただ、ちょっとマイペース気味なとこがある程度。
そんな木下先輩が……。
「障害者、かよ……」
頭に石が降って来たような衝撃が俺を襲う。