− 夏色模様 −




しばらく高速を走っていたバスが、サービスエリアに停まった。


朝も早かったせいか、ほとんどのヤツが夢の世界。


音を立てず、立ち上がった。


トイレにでも行ってくるかな……。 あと、1時間は休憩時間がなさそうだし……。


バスから降りた部員は極わずか。


手短に済ませ、バスに戻る。

ふと、木下先輩に目を向ける。


木下先輩を見れるのは、バスの乗り降りの時くらいだ。

今見ないで、いつ見るんだ!


「――― ッッ」


俺の足は、瞬時に止まってしまった。


なんなんだよっ、これ。 ある程度は予想していたさっ。

でも、こんなん……。


木下先輩が、前田先輩の肩に頭を乗せて眠っている。

前田先輩も、木下先輩寄りに目を閉じている。


二人は、付き合っているわけじゃない。

でも仮に“男”と“女”である。


こんなにもお互いが、許しあえる関係なのに“恋人ではない”なんて、おかしすぎる。




< 203 / 300 >

この作品をシェア

pagetop