− 夏色模様 −




「――― んっ」


前田先輩が動いた。


「す、すいませんっっ。 …… うるさかったですか?」


小声で前田先輩に話しかける。

ゆっくりまぶたを開けた前田先輩に、俺が映った。


「いやっ、大丈夫だ。 …… 今って休憩か?」


俺は小さく頷いた。


前髪を掻き上げるその姿に、つい目を奪われる。


「そっか……」


それだけ言って、隣の木下先輩に視線を移した。


釣られるように、木下先輩に視線を移す。


相変わらず、気持ち良さそうに眠る姿は“天使”そのもの。


「ちょい、いいか?」


「はいっ」


席を立ち上がった前田先輩を避けるように、俺は一歩後ろに下がった。


どうやら、上の荷物置場を探っているらしい……。


「悪いっ“これ” 持っていてくれ」


前田先輩から、黒い財布を渡された。


まだ、何か探しているのかガサガサやっている。




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