− 夏色模様 −




いったい、何を探しているんだ?

大きい荷物は、バスの下に閉まってあるし…… 荷物置場にあるのは、ケータイとか小さい荷物だけだと思うんだか……。



「――― !」


何かを見つけたのか、前田先輩の表情が綻ぶ。


手に持っていたもの。 それは…… タオルケット、だった。


タオルケットを少し広げ、木下先輩のヒザに掛けた。


「――― っっ」


俺の胸は、締め付けられたように痛い。


車内はクーラーがガンガン効いていて、少し肌寒い。

女の人にとってみたら、寒いくらいなのかも知れない。


「財布、サンキュー」


「あっ、いえ……」


前田先輩に財布を差し出した。


“財布を持った” と言うことは、これから売店にでも向かうらしい。



「名前、なんて言うんだ?」


不意に、俺に話し掛けてきた。




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