− 夏色模様 −




俺の、名前…… だよな?


「西村 雄飛です。 2年で、キャプテンやってます」


「そっか、サンキューな西村。 俺は前田 樹(マエダ・イツキ)」


いやいや、知ってますから!
あなたは、俺が尊敬する先輩ですから!


「寝てる奴は…… 木下 まお」


木下先輩は、俺の想い人ですから!


「今日からよろしくな」


肩をポンッと叩き、前田先輩はバスを降りて行った。

木下先輩は、大人しく寝ている。


長い黒髪、小さい手。

それに触ってみたくて…… 俺の手が、ゆっくり伸びる。


「――― ッッ」


だか、俺の手は空気を掴んだ。


なにしてんだよ、俺……。

これじゃあ、ただの変人だ。


ゆっくり、自分の席に戻った。


隣に座っている捺稀は、口を開けて眠っている。




< 206 / 300 >

この作品をシェア

pagetop