− 夏色模様 −
俺の、名前…… だよな?
「西村 雄飛です。 2年で、キャプテンやってます」
「そっか、サンキューな西村。 俺は前田 樹(マエダ・イツキ)」
いやいや、知ってますから!
あなたは、俺が尊敬する先輩ですから!
「寝てる奴は…… 木下 まお」
木下先輩は、俺の想い人ですから!
「今日からよろしくな」
肩をポンッと叩き、前田先輩はバスを降りて行った。
木下先輩は、大人しく寝ている。
長い黒髪、小さい手。
それに触ってみたくて…… 俺の手が、ゆっくり伸びる。
「――― ッッ」
だか、俺の手は空気を掴んだ。
なにしてんだよ、俺……。
これじゃあ、ただの変人だ。
ゆっくり、自分の席に戻った。
隣に座っている捺稀は、口を開けて眠っている。