− 夏色模様 −
「部屋から見えるらしいぞ」
「本当! やったー!」
「時間あったら行ってみるか? 体育館から近いらしいし……」
「うん、行く!」
二人は“合宿”というより“旅行”気分だな。
「海、入れるかな?」
「辞めとけ、濡れる」
「えー、大丈夫だよー」
「お前は絶対、濡らすから見るだけ。 …… それ以上言ったら連れてかないぞ?」
「はーい……」
何度も言う。 二人は付き合っているわけじゃない。 ただ、仲が良いだけ。 仲が良いだけ…… なのに、やっぱりひっかかる。
「まおーっ、前田くんっ!」
「はいっ!」
愛川先輩の声が飛ぶ。
「今回は何しに来たの?」
小さな疑問を二人に投げかけた。
俺たちの視線は、前田先輩と木下先輩に向く。
「えーっと……」
前田先輩が木下先輩の左側の耳に顔を近づけて、口を動かした。