− 夏色模様 −
「…… “旅行?”」
「……」
前田先輩は、笑いを堪えている。
愛川先輩は愛川先輩で、呆れたように頭を抱えた。
「えっ、違うよ、違う! 何言っているの!! 合宿だよ、合宿!」
言い換えてもいまさら遅い。
「まお、夕ごはん。 楽しみにしておきな。 ピーマン、買ってくるから」
「えぇー、やだー! 優ちゃんの意地悪ーッッ!
もぅ、いっくんのバカッ! 変なこと言わないでよッッ」
隣に立つ前田先輩をポカポカ叩いている木下先輩は、顔が赤くなっている。 目には、うっすら涙が貯まっている。
「ハハッ、悪かったって。 ほら、ゴミ捨てに行くぞ」
さりげなく木下先輩の腰に腕を回した前田先輩は、彼氏のようにしか見えない。
木下先輩は、木下先輩で拒否っている様子も見えない。
「ヤバくね!? 木下先輩」
「彼氏っているのか?」
「前田先輩だろ?」
なんて言葉が、ゴミを捨てに行った二人が居なくなってから車内で飛び交った。