− 夏色模様 −
1日目⇒ 恋人疑惑。
「…… なに?」
「あっ、いえ……」
みんな焦っている。
なんせ俺らは、前田先輩と木下先輩のことを話していたんだからな。
「なに…… 俺の顔に何か付いているのか? …… 西村」
「なんでもないっス。 …… お茶ですね。 ちょっと待っていてください」
俺は前田先輩に言われたように、お茶を二つ持って行った。
「ありがとな」
「いえ……」
「…… いっくんって、部員の人の名前、覚えているの?」
き、木下先輩!
木下先輩が前田先輩の後ろからひょっこり現れた。
さっきまでいなかった木下先輩の登場に、俺らは胸が鳴る。
「覚えてねーよ。 ただ西村とはちょっと朝、話しただけだ」
「ふーん」
“ほらよ”と、前田先輩の手から木下先輩の手にお茶が渡った。
両手で持つ木下先輩は、嬉しそうに笑った。