− 夏色模様 −

1日目⇒ 恋人疑惑。





「…… なに?」


「あっ、いえ……」


みんな焦っている。

なんせ俺らは、前田先輩と木下先輩のことを話していたんだからな。


「なに…… 俺の顔に何か付いているのか? …… 西村」


「なんでもないっス。 …… お茶ですね。 ちょっと待っていてください」


俺は前田先輩に言われたように、お茶を二つ持って行った。


「ありがとな」


「いえ……」


「…… いっくんって、部員の人の名前、覚えているの?」


き、木下先輩!

木下先輩が前田先輩の後ろからひょっこり現れた。


さっきまでいなかった木下先輩の登場に、俺らは胸が鳴る。


「覚えてねーよ。 ただ西村とはちょっと朝、話しただけだ」


「ふーん」


“ほらよ”と、前田先輩の手から木下先輩の手にお茶が渡った。


両手で持つ木下先輩は、嬉しそうに笑った。




< 217 / 300 >

この作品をシェア

pagetop