− 夏色模様 −
たぶん、体育館にいるのは前田先輩と木下先輩だけ。 だから、取りに行くことは可能なんだけど……。
「今日は疲れたな……」
「まあ、まおの体力じゃ大変だろうな」
「優ちゃんは去年、一人だったんだよね。 なんか、悪いことしたな……」
俺、入れる空気じゃねーよな?
前田先輩と楽しそうに話す二人の空気を邪魔できない。
「でも、去年はしょーがねーだろ?」
「そうだけど……」
去年の夏合宿。 木下先輩は参加しなかった。 愛川先輩が全部マネージャーの仕事をやっていた。
木下先輩も参加予定だったはずなのに…… どうして参加しなかったんだ?
「去年のまおは、まだこの時期は聴力が安定していなかったんだ。 だから、合宿に参加なんかして、マジで耳が聞こえなくなっていたかもしれないだろ?」
「――― ッッ」