− 夏色模様 −




おいっ、今…… なんて言った?

“聴力”とか、言っていなかったか?


「でも、あの頃と今を比べても…… 聴力、変わらないもん。 結局、聞こえないままだよ?」


木下先輩が、耳が聞こえないって…… マジだったのか?

俺の、聞き間違いじゃなかったのか?


「全く聞こえないわけじゃないだろ? 今だって、俺と話しが出来ているんだ。 だから、気にするな」


「でも…… ちょっと、怖い」


木下先輩の小さい声が届いた。 本当に消えてしまいそうな、弱い声。


「ボールがいつ飛んでくるかわからないし、後ろから来たら全然わからないの……」


マジで耳が聞こえないんだよな……。

つーか、なんでそんな状態なのに参加なんてしたんだよ。

わかんねーよっ、木下先輩の考えが―――。

前田先輩の考えもわからねーよ。




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